生体力学は,機械工学における力学(材料力学,流体力学,熱力学など)の知識・手法を生体現象に適用して,個々の現象の解明を行うとともに,その成果を医療・福祉の場や産業に還元する分野です.

 

 ミクロあるいはマクロレベルで力学の関与した生体現象を機械工学の手法を用いて調べ,医療や生活の質を改善する方法を生み出したり,傷病を予防するシステムを構築したりします.

 

1.       ステントを用いた胆道(胆管)ドレナージに関する医工連携研究を2022年度から消化器内科の研究者(医師)と始めました.医用画像の解析,胃・肝臓とステントを用いた実験的研究,および,有限要素法を用いた数値シミュレーションの3つから成り立っています*7胆管ステントの逸脱防止に関する研究2024年度から研究助成を受けて進めていきます.医工連携研究に関心のある方は一緒に研究しましょう.(在籍生:*7西

 

2.       動脈硬化や動脈瘤,動脈解離などによって変性・損傷した血管では,血管の微視的構造変化と巨視的形態変化が血圧に対する力学的耐性を低下させ,破壊へとつながります.そこで,生体組織を対象とした微小荷重域での引張り試験機を開発してきました.最近は,解離の生じた動脈の組織学的情報や大動脈の臨床画像に基づいた有限要素解析*5を行っています.医療データに基づいて解離のモデルを作って有限要素解析を行うことに関心がある方は一緒に研究しましょう.(修了生:*5小川.卒業生:*5中村)

 

3.       体表面のうち骨が突出した箇所では長時間の圧迫によって組織の壊死(褥瘡)が起こります.また,体組織はずれの力も受けます.そこで,圧迫やずれという力学的環境因子が褥瘡の発症に対してどの程度寄与しているのか,実験(圧迫とずれを受ける脂肪細胞の変形挙動の可視化*1)や有限要素法を用いて解明しています.また,市販の多様なマットレスの体圧分散効果やずれ力の低減効果の評価を行うための測定システムを作製し,実験(褥瘡発症低減効果を評価する測定装置の開発と測定*2, 4)や有限要素解析を行っています.また,超音波による静脈の変形挙動の測定*3と有限要素解析*5を行っています.マイクロスコープや超音波プローブで「肉眼では見えないもの」を可視化して調べることに関心がある方は一緒に研究しましょう.筋膜の一つの浅筋膜も関わっています.(修了生:*1中山, *2真鍋,*3霜出, *4石井*5田上

 

4.       折れた歯の修復部に力が加わって破断することがあります.そこで,このようなことがないように,材料の物性と力学の観点から修復する方法を考えます*6.また,歯根部の治療具について,超弾性合金製の治療具の変形測定と有限要素解析による評価も試みています.強化複合材料や超弾性合金材料繊維について変形測定と有限要素解析を行うことに関心がある方は一緒に研究しましょう.卒業生:*6西

 

5.       材料力学理論や連続体力学理論に基づいて,微小ひずみ又は有限ひずみの生じる材料の応力・ひずみ解析を行います.最近は,生体の軟部組織のせん断変形や粘弾性特性を測定することに力を入れています.連続体力学の理論の応用に関心がある方は一緒に研究しましょう.

 

科学研究費補助金で共同研究を行っています(KAKEN山田宏00220400).

最近行っている研究について学会発表を行っています.