研究室では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる、電気で駆動する微小な機械や、微量の液体を取り扱うマイクロ流体デバイスを作製し、様々なバイオ応用研究を行なっています。MEMSやマイクロ流体デバイスは、微細加工技術によって作製され、小さなものでは数十ナノメートルの構造を得ることもできます。DNAや細胞のサイズはナノメートルやマイクロメートルの単位であるため、これに近いサイズの構造のMEMSやマイクロ流体デバイスは、生体試料の取り扱いに適していると言えます。

 

 

単一細胞の機械特性の評価

近年、細胞の硬さや粘弾性、変形能などの特徴は、細胞内部の状態や疾病と関連があるという研究成果が報告されています。私たちは、細胞の機械的な特徴と疾病との関連性を明らかにすることを目指して研究を行なっています。
MEMSピンセットはシリコン製で、微小物質を直接つかむことができます。駆動部とセンサを内蔵しており、つかんだ対象物の機械的な特性をリアルタイムに計測することができます。これを用いて単一細胞の機械特性評価を行なっています。細胞などの生体試料は溶液中に存在するため、微量な液体を入れるマイクロチャンバーとMEMSピンセットを組み合わせた実験セットアップを構築しています。

 

 

 

DNAと他の物質との相互作用計測

DNAは遺伝情報を持つ重要な物質で、これまでDNAに関する多くの研究がなされてきました。
他の物質がDNAに結合したり、化学的な変化によりDNA構造の一部が変化することがあります。DNAの自己修復ができなかった場合は、細胞が増幅できなくなります。がん治療薬の中にはこの仕組みを利用して、DNAに結合してがん細胞の増殖を抑えるものもあり、治療に使われています。
DNAは直径2nmの非常に小さな物質ですが、長さは様々であり、数-数十マイクロメートルの長さであれば、MEMSピンセットで捕捉することができます。MEMSピンセットで補足したDNAを試薬溶液に浸し、DNAと化学物質の反応によって生じた構造変化を計測することができます。また、DNAに対して濃度の異なる溶液を順々に効率よく反応させるために、MEMSピンセットと併用可能なマイクロ流体デバイスを開発しています。現在は、DNAに構造変化を与える抗がん剤の試薬濃度影響、バクテリアDNAに付加する銀イオンの評価を行っています。

 

 

 

 

 

-共同研究先-
S. L. Karsten (NeuroInDx)
S. H. Kim (東京大学)
Y. Tauran (LIMMS/CNRS-IIS)
A. Coleman (元リヨン大学教授)
S. Kaneda (工学院大学)
H. Fujita (東京都市大学)
M. C. Tarhan (SMMiL-E LIMMS/CNRS-IIS)