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半導体光触媒を用いた新たな物質変換システムの構築

非同期型反応

 半導体粒子を用いた光触媒反応は、光励起により生じた励起電子と正孔が移動し、粒子表面上で酸化還元反応を 行うことによって進行します。しかし、これらの酸化と還元の反応は,粒子上で非選択的に起こるために、目的とは 異なる反応が起こり、「還元生成物が再び酸化され出発物質に戻る逆反応(右上図)」,もしくは, 「出発物質が目的としない反応に利用される副反応(右上図)」といった問題が、反応選択率の低下を引き起こします。 そのため、多くの反応系では十分に高い選択率が得られず、最終的に、高純度・高濃度の目的物質を得るには 精製や濃縮といった非光触媒プロセスが追加で必要となります。したがって、光触媒反応を主とする物質変換プロセスを 成立させるためには、既存のコンセプトから脱却した新たな光触媒反応系の構築が望まれています。
 従来型のコンセプトでは、効率の良い反応が進行するために、電子と正孔を再結合させることなく、 1:1の割合でほぼ同時に反応に利用させるといった取り組みがなされています。このような従来型の 反応に対して、我々はすこし変わった取り組みをしています。具体的には、 代表的な光触媒である酸化チタン(IV)(TiO2)に、ドナー有・アクセプタ無の環境下で励起光を照射すると、 正孔はドナーに消費され、一方で電子は何も還元するものが無いため、TiO2内に電子が蓄積します(左下図)。 その後、暗所下で、系内にアクセプタを導入すると、TiO2内に蓄積された電子による還元反応のみが起こり、 このとき酸化反応は起こりません(右下図)。つまり、酸化と還元の反応の時間軸が分離された反応(非同期型反応)を 進行させることができ、これによって、逆反応や副反応のような問題を最大限に抑制し、選択率の高い反応を行うことができます。

繰り返し可能な非同期型反応

 非同期型反応の欠点は、蓄積電子量には上限があるため、1回の非同期型反応で高濃度の目的物質が 得られないことです。回収量を増やすには、電子の蓄積→放出→蓄積→放出→…の繰り返しが必要ですが、 2回目以降の電子蓄積の際は、還元生成物と正孔(光触媒)の接触を防ぐ必要があります。
 この還元生成物の酸化を防ぐために、極性の差によって水相と有機相が相分離することと、 これらに対する溶解性・分散性の差を利用して、有機層/水層からなる二層系の反応場において 繰り返し可能な非同期型反応を行っています。

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