ニュースレター「THE DIVISION」

REPORT「学会参加報告」から


第6回生体関連セラミックス討論会に参加して
明治大学理工学部 工業化学科  生体関連材料研究室 
相澤守

 去る2002年12月12日〜13日の2日間、テイジンホール(大阪市中央区)にて奈良先端科学技術大学の大槻先生のお世話で第6回生体関連セラミックス討論会が開催されました。1日目は25件、2日目(午前)は11件の発表と活発な討論がありました。2日目の午後は名古屋工業大学の春日先生のお世話で生体関連ビギナーズセミナーも開催されました。
 この討論会は発表時間5分・質疑応答10分という発表形式で運営されております。これは第1回目の討論会を企画された東京工業大学の岡田清先生以来の伝統となっております。充分な討論時間を用意しているにも関わらず議論が尽きず、時間をオーバーする講演もあり、バイオセラミックス分野のアクティビティーの高さを感じました。
  今回の発表は、「アパタイトと微構造」、「生体活性とin vitro評価」、「非晶質と生体材料」、「空間と機能」、「表面と機能制御」、「ベクトルと機能」、「材料と生体応答」、「ハイブリッドと機能」、「ハイブリッドと次世代材料」の9つのセクションに分類されて開催されました。
 発表全体の傾向としては、1)アパタイトの構造解析や焼結性といった基礎的な研究、2)人の血漿の無機イオン濃度とほぼ等しく調整した生体擬似体液を利用した新規材料の開発研究およびアパタイト形成能に関する研究、3)各種生体材料へのポーリング処理による高機能化、4)バイオセラミックスの強靭化を指向する無機/有機ハイブリッドの開発研究、5)ティッシュエンジニアリングのスキャフォルドの開発研究などが散見されました。
  今回、私が特に興味を持った研究は、上記の5つの分類には該当しておりませんが、アパタイトの吸収性に関する2件の報告があったことです。アパタイトのin vivoでの吸収性はきわめてゆっくりしたものであるということが知られております。今後、詳細にこの事実を検証していくことが必要だと思いますが、条件によってアパタイトが吸収性を示すというのは興味深い現象かと思います。
 最後に、この討論会を通じて感銘を受けていることは、一般の参加者だけでなく学生が熱心に質疑応答に参加していることです。次世代の日本を盛り上げることができるのは、理工系学生のポテンシャルだと常々考えており、生体関連材料部会の討論会やセミナーに参加している学生の方々には期待しています。どうぞこれからもご活躍ください。
 本討論会とビギナーズセミナーをお世話してくださった大槻先生と春日先生ならびに当日の会場の設営と運営に尽力してくださった学生の方々に、この場を借りて感謝申し上げます。

(2003年10月発行、The Division No. 38より)


第14回日本MRS学術シンポジウム 参加報告
山口大学大学院医学研究科 応用医工学系
博士後期課程1年 川内義一郎

去る2002年12月20日と21日の両日、東京工業大学大岡山キャンパスにおいて第14回日本MRS学術シンポジウム−21世紀を作る先進的かつ総合的材料研究−が開催された。日本MRS(The Materials Research Society of Japan)は先進材料に関する科学・技術の専門家の横断的・学際的研究交流を通じて、その学術・応用研究および実用化の一層の発展を図ることを目指した学会である。
  今回は2日間で7つのセッションが開催された。そのうち参加したSession G「暮らしを豊かにする材料−環境・医療・福祉−」について報告する。2日間の合計で参加者数; 80名、一般講演;30件であった。本セッションは環境・医療・福祉など身近な暮らしを広くみつめて暮らしを豊かにする材料、プロセス、システムを対象としている。このため着目している大きさは細菌から産業モジュールレベル、素材は無機から有機まで、そして応用分野は電池材料、半導体、環境材料、生体材料などと発表内容は非常に多岐にわたっていた。分野違いの研究者が集まったセッションであったが、それぞれの研究分野から見た質疑がなされ、たとえを用いた平易な説明によって活発な議論が行われていた。
  21世紀の課題である環境、医療、福祉は我々の生活と密接に関わるものである。優れた材料の開発はいうまでもないが、環境負荷に代表されるような製造工程や最終製品、廃棄を意識した材料開発が材料学者に求められている。また、学際研究の時代の中で異分野の研究者との共同も求められている。分野が違うことで数値の差が持つ意味が異なるが、分野特有の常識に囚われない事実があることを感じた。また異分野の研究者との交流によって視野を広く持つこと、相手の分野を理解する必要性を感じさせられる学会であった。
  なお、2003年10月8日〜13日には、横浜のPacifico  Yokohamaにおいて、国際会議IUMRS-ICAM 2003(The  8th  IUMRS  International Conference on Advanced Materials)が開催されます。ここでも、暮らしを豊かにする材料をキーワードとしたシンポジウム:C-4が開催されます。詳しくはHPをご覧ください。
HPアドレス http://www.mrs-j.org/ICAM2003/index.html

(2003年10月発行、The Division No. 38より)


最終更新日:2004年8月3日

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