ニュースレター「THE DIVISION」

REPORT「学会参加報告」から



2003年の学会参加報告
2002年の学会参加報告

2001年の学会参加報告

2000年の学会参加報告

7th World Biomaterials Congress体験記
上智大学大学院理工学研究科応用化学専攻博士前期課程
吉川隼史

 2004年5月17日〜21日、オーストラリアのシドニーにて7th World Biomaterials Congressが開催されました。世界43ヶ国から集まった研究者によって、700件の口頭発表、1,200件に及ぶポスターセッションが行われました。私もポスター発表者の一人として参加致しましたが、私にとって初めての国際学会。加えて、4年に一度開催されるこの学会のあまりの大きさに、オープニング・セレモニーではただただ圧倒されていました。
  口頭発表の内容は、組織工学を柱に、薬、幹細胞、温度応答性高分子、遺伝子などと融合した様々なバイオマテリアルが挙げられ、117ものテーマに分けられました。動物や細胞を使った実験に関する内容が数多くみられました。当然、参加者も材料専門の方々だけではなく、生物学者や、実際に日々患者さんと向き合っている医師も多くみえられていて、実用化を目指した激しい討論が繰り広げられていました。高分子を専攻としている私にとって、普段参加している高分子学会とは異なり、様々な角度から、実用化を目指すうえでの課題や質疑が飛び交うセッションは非常に新鮮で興味深く、貴重な場であると感じました。また、発表後も会場の外で続くセッション、連絡先を交換し、国境を簡単に飛び越えて個人の研究が広がっていく様子を実感することができました。こういった場での人脈を大切にし、情報の吸収と発信を活発に行っていくことが、革新的なバイオマテリアルの実用化に繋がるように感じました。
  今回の学会は、あまりに発表件数が多かったためか、ポスターでのセッションはほとんど行われていなかったように感じました。私自身、ポスター発表者として不完全燃焼の部分はありました。しかしそれ以上に、最先端の技術や最新の情報に触れることができたこと、また、自分とは異なる立場から研究に取り組む方々の意見や考えを聞けたことは、非常に有意義でありました。この経験を通し、自分の研究に関する新たな課題や、新しい知見、ヒントを得ることができました。加えて、自分の実力不足を痛感致しました。今後、研究に邁進するのはもちろんのこと、このような素晴らしい機会を得たときに、セッションを通して、吸収・発信ができる国際人としての下地も身につけていく必要があると、強く感じました。

(2004年7月発行、The Division No. 41より)


第2回ベクトルセラミックス研究討論会に参加して
京都工芸繊維大学物質工学科ポスドク
玉井将人

2004年3月22日に湘南工科大学にて日本セラミックス協会2004年年会のサテライトプログラムのひとつとして第2回ベクトルセラミックス研究討論会が開催されました.本討論会は,物理的,化学的,生物学的な働きかけ(ベクトル)を通じ,種々のベクトル作用を利用した機能性材料の合成や新規合成プロセスの開発を目的とした会議でありました.招待講演3件を含め10件の研究発表がなされ,私も講演者のひとりとして参加いたしました.会場には,ライフサイエンス分野や環境分野を中心とした専門家に加え,これらとは専門を異とする研究者も多数参加されておりました.
  招待講演では,主に物理的な働きかけ,特に磁場による働きかけに注目した研究を中心に紹介されました.一方,一般講演では,主に生体関連セラミックス材料を対象として,化学的,あるいは物理的なベクトルを利用した材料設計が発表されました.特に,生体関連セラミックス分野とは異なる分野を専門とする参加者から,様々な角度での質疑がなされ,活発な討論が繰り広げられました.活発な討論のため予定よりも大幅にずれ込み,セッション後半の発表においては討論の時間少なくなっていました.しかしながら,引き続き交流会においてもベクトル効果に関する討論がなされ,有意義な交流が図られました.
  私にとっては,いずれの研究発表も非常に新鮮で興味深く,各種ベクトルと物質の相互作用が新材料の設計において,いかに重要で有効であるかを学び,革新的なバイオマテリアルの創製には種々のベクトル効果を利用することがひとつの研究の方向であるように感じました.また,私の所属する研究室では,生体関連セラミックスのほかに環境改善を目指した機能性材料の開発も行っているのですが,本討論会で発表されたベクトル効果は,バイオマテリアル以外の他の機能性材料の設計においても十分適応可能であると感じ,今後も積極的に参加したいと強く思いました.

(2004年7月発行、The Division No. 41より)


第3回アジアバイオセラミックスシンポジウム(ABC2003) 学会参加報告
九州大学大学院歯学研究院 口腔機能修復学講座生体材料工学分野 博士課程2年 
鈴木裕美子

去る2003年11月18日〜20日の日程で九州大学医系キャンパス内コラボステーションにて第3回アジアバイオセラミックスシンポジウム(ABC)2003(大会長;岡崎正之教授広島大学大学院、実行委員長;石川邦夫教授九州大学大学院)が開催されました。今回は私自身のポスター発表があるだけでなく、当講座が主管ということもあって、学会前からさまざまな準備を進めてきたため、学会当日を特別な感慨をもって迎えました。
  今回の学会の参加者は米国1名、ギリシャ1名、台湾3名、韓国13名、日本84名でした。参加者の大半は日本人でしたが、国際学会ですのでポスターを含めすべての発表が英語で行なわれました。学会当日は受付業務に携わっていたために、残念ながらすべての発表を聞くことはできませんでしたが、質疑応答がとても印象深く感じました。会場が適度な大きさであったせいもあるかもしれませんが、通常の学会よりもずっと活発な意見が交わされていたように感じました。また、自分に関連あるテーマを研究している海外の研究者の発表を聞くことにより、自分自身の研究についての意識を高めることができたように思います。私はポスター発表でしたが、さまざまな先生方から質問をいただきました。その結果、自分の勉強不足と英語力の乏しさとを思い知らされましたが、これを機会に研究分野の勉強だけでなく英語も勉強していきたいと感じました。
  懇親会はポスター発表会場となったコラボステーションの1階のホールで行なわれました。懇親会ではいろいろな方と多方面で話すことができました。海外から参加された先生とお話しした際に、今後の自分の研究に対するヒントを得ることができ、私にとってはとても有意義な懇親会となりました。
  今回のABC2003に参加して、日本国内の学会とは違った雰囲気を味わうことができました。また、海外にもさまざまなバイオセラミックスについて研究している先生方がいるということを身近に感じることができ、自分も今後の研究に対してより一層の努力をしていかなければならないと痛感しました。

(2004年4月発行、The Division No. 40より)


第16回医用セラミックス国際シンポジウム(Bioceramics 16)参加報告
(財)ファインセラミックスセンター材料技術研究所生体材料プロジェクト室
副主任研究員 高玉 博朗

第16回医用セラミックス国際シンポジウム(Bioceramics16 : 16th International Symposium on Ceramics in Medicine)が、2003年11月6日から9日までポルトガルのポルトにおいて開催された。本シンポジウムは、毎年1回開催され、「セラミックス等の材料を扱う研究者」と「開発された生体材料を実際に医療現場で用いて治療を行っている臨床医」が共に集い、同じ土俵で最新の問題点について議論する医用セラミックス研究の分野で最も主要な国際会議である。
  本学会では、1件のオープニングレクチャー(60分)、4件の招待講演(30分)、138件の口頭発表(15分)、136件のポスター発表があった。ポスター発表者にも各人3分の発表の場が与えられた。オープニングレクチャー、招待講演のいずれの発表にも、各会場には入りきれない程の人が集まり、皆熱心に講演を聞いていた。様々な生体材料に関する長年にわたる研究により得られた知見と、その開発経緯について詳しく述べられ、材料開発を成功させるためには生まれた研究成果をどのようにして製品化に結びつけているのかを聞くことができ、非常に参考となった。
  各発表の内容については、人工骨に関する発表が一番多かった。その他には、骨セメント、歯科材料、組織工学や再生医療における足場材(スキャフォールド)の開発に関する発表も多かった。しかし、人工関節に関する発表は昨年より少なくなった。開発する材料系に関しては、依然としてリン酸カルシウム系セラミックスやチタン金属単体を利用したものが多かったが、その一方で、新しい機能を付与した無機−有機複合体からなる新規材料の開発に関する発表が昨年より増加した。複合材料に関しては、PTMO-Ta2O5ハイブリッドや、ラミニン−アパタイト複合体、PLGA−アパタイトハイブリッド、PLGA−チタンとアパタイトの複合物の開発などの新しい試みに特に目がとまった。骨セメントに関しては、その多くはリン酸カルシウム系セメントに関するものであったが、フィラーの検討を行い、新しい系のセメントの開発には特に目がとまった。スキャフォールドに関しては、アパタイト多孔体が多く使用されているが、生体活性ガラス、チタン、高分子を使用したものもあり、興味を引かれた。いずれの発表においても盛んな質疑応答が繰り返され、各国の関心の高さがひしひしと感じられた。非常に多くの最先端の情報が得られ大変有意義な会議であった。
  本会への学会参加者は、総勢32ヶ国340名であり、例年通りの規模で、上述の通り非常に活気あふれるシンポジウムであった。また学生の参加も積極的で、その総数は106名であり、参加者全体の約3分の1を占めた。その中から6名が学生賞として選出され、このうち2名が日本人であり、松本知之(京大)、前田浩隆(名工大)の両氏が受賞の栄誉を受けた。国別参加者数は、多い順に1)日本62名、2)ポルトガル46名、3)英29名、4)仏27名、スペイン27名、6)独23名、7)韓国20名、8)中国(台湾含む)15名等であった。ヨーロッパ開催にも関わらず、日本人参加者が最も多いことから、現状では日本が医用セラミックス分野を世界的にリードしていると言える。しかし、最近の韓国・中国等のアジア勢の台頭が顕著であったことを考えると、今後も日本が本分野で世界のトップを維持するためには、国内でしっかりとした連携を構築し、国家レベルで戦略を進める必要があることを、本シンポジウムに参加することで改めて感じさせられた。次回は、2004年12月8日から12日までアメリカのニューオリンズにて開催される予定である。

(2004年4月発行、The Division No. 40より)


第7回生体関連セラミックス討論会体験記
上智大学大学院理工学研究科 応用化学専攻博士前期課程
河田充弘

 去る2003年12月4、5日に東京医科歯科大学にて行われた第7回生体関連セラミックス討論会に参加いたしました。私は一昨年から3度目の参加だったのですが、今回は3件の特別セッションを含む50件の口頭発表があり、生体関連セラミックス討論会の活気あるディスカッションには毎年圧倒されました。また、研究者の育成といった観点から学生に座長を任せていただき、大変貴重な体験をさせて頂きました。

 私は初日のセッション1(スキャホールド)の座長を伊藤敦夫先生と担当しました。これまでに学会での座長の経験などあるはずも無く、非常に緊張していました。その時に伊藤先生に「それじゃ、君は最初の2件をお願い。」とあっさり言われ、逆に緊張がほぐれたことを覚えています。実際に発表が始まると、発表者と建設的なディスカッションをすることは難しく感じられ、適切な質問が出来ずに苦心しました。こういった感覚を味わっただけでも座長を務めた経験は非常に有意義であり、「学生座長」は是非とも続けて頂きたいと考えています。

 また、発表5分、討論10分といった時間配分が象徴しているように、非常に活発な質疑応答が生体関連セラミックス討論会の特徴だと感じています。出席された先生方は、材料を専門としている方々だけではなく医学・歯学系の方々も多く、生体材料を開発する上で必要となる幅広い観点からの質問は大変勉強になりました。私自身は応用化学専攻ということもあり、どうしても考え方が材料開発に偏ってしまいます。そのため、生体材料にとって一番大切な「実際に材料として手術室で扱う際には何が必要なのか」といった感覚を持った医学・歯学系の先生方の発言は、研究を行う上で刺激となりました。

 加えて、質疑応答でも学生の発言が多かったことが印象に残っています。(私自身も、相当な生意気をさせて頂きました。)他の学会では学生が質問をすることはなかなか難しいため、生体関連セラミックス討論会は貴重な場であると感じています。

 学会に対してこういった感想を持つのもおかしいのかもしれませんが、非常に楽しい学会でした。

(2004年4月発行、The Division No. 40より)

第25回 日本バイオマテリアル学会大会 参加報告
名古屋工業大学大学院 工学研究科 物質工学専攻(D2)
前田浩孝

第25回日本バイオマテリアル学会大会が、去る平成15年12月16日、17日の二日間、大阪国際会議場にて開催されました。会場は、3つの講演会場と1つのポスター会場に分かれており、どの会場も座席が足りないほど、聴衆で混み合っていました。また、学生の方も多く見られ、活気あふれる学会の様子が感じられました。
  今回の研究発表は、特別講演、シンポジウム、学会賞受賞講演、一般講演合わせて300件を越える発表が行われました。本大会は、セラミックスや高分子、金属、それらの複合材料等のバイオマテリアルや、組織工学的手法を用いた組織再生など多岐にわたる講演がありました。私はこれまで材料関連の学会を中心に参加してきましたが、この学会では、細胞や動物を用いた実験や臨床例に関する報告が多いことが印象的でした。
  1日目に行われた骨再生のセッションでは14件の報告があり、多孔質アパタイトブロックに細胞を組み込んだ研究が多くあり、気孔径の違いやアパタイトへの炭酸の置換が骨再生能に及ぼす影響に関する研究が発表されました。また、アパタイトを用いた培養人工骨の臨床例に関する報告も行われました。
  2日目に行われた機能性ナノバイオ材料の新展開のシンポジウムでは4件の報告があり、温度応答性高分子を用いた培養皿、薬物キャリアへの応用を考えたpH応答性ナノゲル粒子、共有結合で介した酸化チタンとシリコーンの複合体の作製や、高分子超薄膜によるハイドロゲル表面の機能化に関する研究が報告され、分子レベルでの材料設計から、細胞との反応等が示されました。このシンポジウムのような細胞と基材間の相互作用に注目し、ナノレベルでの基材表面の構造を制御する試みに、参加者の関心が集まっていました。
  今回、初めてこの学会に参加させていただきました。この学会では、様々な視点からのバイオマテリアルに関する研究報告が行われ、私自身にとって、材料設計に関して非常に参考になりました。よりよいバイオマテリアルの開発には、材料開発における工学系だけでなく、患者さんと日頃接している医学研究者の意見も積極的に取り入れることが重要になると考えられます。この学会では、医学と工学が連携できる貴重な学会であると思います。今回は聴衆として参加しましたが、次回は発表者として参加し、多くの研究者との意見交換を行いたいと感じました。
  学生の立場としては、発表の内容が日本のトップレベルにあり、座長まで任せて頂ける生体関連セラミックス討論会では、多くのことを学びました。後輩にもこういった貴重な体験をしてもらいたいと感じております。

(2004年4月発行、The Division No. 40より)


第15回 無機リン化学討論会 参加報告
名古屋工業大学大学院 工学研究科 物質工学専攻(M1)
廣部 由紀
       

 第15回無機リン化学討論会が、去る平成15年10月14日、15日の二日間、山梨大学情報メディア館にて開催されました。会場には、学生の方も多く見られ活気あふれる討論会の様子が感じられました。今回の研究発表は、「機能性リン酸塩」、「アパタイト」、「シクロリン酸塩」、「層状リン酸塩」、「マシナブル」、「固定化・難燃性」、「プロトン伝導」、さらに「若手優秀発表賞」の8つのセッションに分かれており、計42件の講演が行われました。さらにこれらとは別に特別講演として「環境浄化用リン酸塩化合物」、「赤ワインは健康に寄与するか」と称する特別講演が行われました。
 1日目に行われた特別講演では、フランスや山梨などのブドウの産地別の気候や、それらのブドウの糖度など様々な観点から比較し、傾斜地農業によって栽培できるワインのためのブドウという付加価値の高い農業が、山地が多く、労働力も高い日本では適していることが発表されました。さらには近年非常に注目されている赤ワインの色調や渋みに関連した赤ポリフェノールの効能について、また白ブドウにほとんど含まれない白ポリフェノールを増加させる方法が発見され、それを利用してポリフェノールを多く含んだ白ワインが製造可能になったことが報告されました。
  「アパタイト」のセッションでは、10件の報告があり、発表の傾向としてはこれまでに報告されてきたアパタイトの高機能化を目指す研究が増えていることを感じました。アパタイトをより高機能化させることを目的として、特定の結晶面を多く露出させるという水熱プロセスによる新規アパタイト顆粒の作製、水熱プロセスによる新規アパタイトシートの作製、表面積が大きく骨形成に有利なアパタイト多孔体中の気孔にコラーゲンをスポンジ化させて作製するアパタイト-コラーゲン複合体の作製方法と評価、また表面にCaサイトを有するアパタイトに着目し、正電荷に分極したCaサイトとアニオン性高分子であるフミン物質の相互作用によって吸着させるという報告などがなされました。ポーリングハイドロキシアパタイトに関しても、炭酸含有アパタイトの表面機能制御、表面における生物学的初期反応の発表があり、熱心な討論がなされました。
 今回、私は初めてこの学会に参加させていただきました。この討論会を通じて非常に感銘を受けたことは、リン酸塩をいろいろな方面からのアプローチで深く研究されていること、質疑応答時間には収まらないほど討議が続くものが多数あったこと、一般の参加者のみならず学生も質疑応答に参加していることです。さらに、フランスとドイツからの参加者があり英語での質疑応答も見られ、この討論会のポテンシャルの高さを感じました。これからは研究のみならず語学を身につけていくことの必要性があると痛感しました。

(2004年1月発行、The Division No. 39より)

第22回日本運動器移植・再生医学研究会 学会参加報告
山口大学大学院医学研究科応用医工学系 博士後期課程1年 
川内義一郎

去る10月25日(土)に千里ライフサイエンスセンターにて第22回日本運動器移植・再生医学研究会(会長;吉川秀樹教授、大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科(整形外科))が開催された。本研究会は医師対象の研究会であったが、規約改正で次回より医師でなくても参加できるようになる模様である。
  今回の研究会では特別講演;2件、一般講演;38件であった。その一例として『骨髄間葉系細胞を用いた骨再生におけるporous HA scaffold』、『ポーラス構造を有する生体活性チタンの骨誘導能』、『多孔質ハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体の生体内での評価・BMP担体としての評価』、『ファイバー変異型アデノウィルスを用いた効率的骨再生治療』、『ウサギ頸骨近位骨幹端部骨折モデルに対するFGF-2投与の効果』、『凍結保存ヒト骨髄由来未分化間葉系細胞による骨形成』、『細胞外浸透圧の変化が3次元培養軟骨に及ぼす影響について』など骨再生や軟骨再生のために材料、遺伝子導入、薬剤、細胞、培養環境などあらゆる検討がなされていることを知ることができ、大変有意義であった。特に田畑泰彦教授(京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野)の特別講演『DDSとScaffold技術を用いた組織再生誘導と再生医療』では、生体組織工学(Tissue Engineering)を細胞の増殖・分化のためのScaffold(足場)あるいは生体内で不安定な細胞増殖因子の組織再生効果を得るためのDDS技術などを利用して再生誘導の場を構築するための医工学技術・方法論と定義付けし、組織再生誘導と再生医療の現状について述べられていた。
  医学研究科に在籍しているとはいえ、医師ではないため、いくぶん理解しがたい内容も多かったが、材料がどのように使われているのかを知ることができ、また生体組織工学におけるScaffoldの重要性を改めて認識する良い機会となった。そして、改めて材料を作る工学者と材料を用いる医学者(生命科学者)との連携の重要さを感じる学会であった。それにしても医学系の学会における発表時間の短さ(6分!)には驚かされた。

(2004年1月発行、The Division No. 39より)

The 8th IUMRS International Conference on Advanced Materials (IUMRS-ICAM20 03)学会参加報告
山口大学大学院医学研究科応用医工学系 博士後期課程1年 川内義一郎

去る2003年10月8〜13日、パシフィコ横浜にてThe 8th IUMRS International Conference on Advanced Materials (IUMRS-ICAM2003)が開催された。本学会はInternational Union of Materials Research Societiesの国際シンポジウムであり、事務局発表で事前参加登録者が2,000名以上という大規模な学会であった。今回は4つのカテゴリーで合計39のシンポジウムおよび2件のフォーラムが開催された。生体関連セラミックスに関する発表は主にシンポジウムC-2 「Soft Solution Processing」、C-4 「Materials for Living - Environment, Medicine, Welfare」、C-8 「Nano - Medical Materials I - Bioinspired Materials and System -」、C-9 「Nano - Medical Materials II - Bioceramics -」などで発表されていたが、今回は主に参加したシンポジウムC-4について報告する。

シンポジウムC-4「Materials for Living - Environment, Medicine, Welfare」は電子材料から生体材料に渡る幅広いテーマを網羅するセッションで、2日間の合計で参加者数;約100名、招待講演; 2件、口頭発表;22件、ポスター発表;22件であった。Prof. Seishi Goto (Yamaguchi University) により『Problems in Sustainable Development』と題して招待講演が行われ、人類の持続的発展がどうあるべきかについて、これまで従事されてきた研究をまじえてご講演され、非常に考えさせられた。また、口頭発表の一例としては『A Novel Fabrication Technique of Porous Hydroxyapatite Ceramics』、『Biocompatibility of Hydroxyapatite Films on Various Metals Formed by a Surface Treatment Using an Enzyme Reaction』、『In vitro Platelet Adhesion and Protein Adsorption of Biomedical Implant Modified with Polysaccharide』、『SBF Evaluation of Bioactivity of Polarized Ceramic Apatite Solid Solutions』など、ポスターセッションでは『Preparation and Characterization of Modified Polyvinyl alcohol-hydroxyapatite Composite』、『Porous Ceramics of Hydroxyapatite with Bimodal Pore Size Destribution Prepared by Hydrothermal Method』、『Transparent Hydroxyapatite and β-Tricalcium Phosphate Ceramics Prepared by Spark Plasma Sintering』などがあった。ポスターセッションを含めて各発表において活発な議論が行われ、有意義な意見交換がなされていたと思う。C-4の若手奨励賞はDaisuke Kawagoe (Yamaguchi University)とTomoko Yamakawa (Yamaguchi University)の両氏が受賞された。

(2004年1月発行、The Division No. 39より)


最終更新日:2004年8月3日

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