研究紹介 「血液分離デバイス」

誘電泳動を利用した血漿抽出マイクロデバイス

在宅で簡単に健康状態を診断することが可能なデバイスの実現を目指して、誘電泳動力と毛細管力を利用して微量な血液から血漿を分離抽出するマイクロ流体デバイスを構築しました。 このデバイスは、PDMS(シリコーン樹脂)製の主流路(幅500μm、深さ100μm)、その側面に形成された多数の側流路(幅5μm、深さ2μm)、その下流に配置されたリザーバー、 及びガラス基板上に形成された2本の電極で構成されます(下図(a)-(c))。 主流路の入口に血液を滴下すると、血液は毛細管力によって主流路内へと導入されます(下図(d))。 2本の電極間に交流電圧を印加すると電極間に不平等電界が形成されるため血球に誘電泳動力が加わり、側流路の入口をふさいでいた血球が除去されます。 この結果、血漿が毛細管力によって側流路内に浸入し、その下流のリザーバー内に抽出されます(下図(e))。 これまで、血球除去率や血漿抽出量などを評価しながら、流路形状や電極形状、印加電圧の周波数などの最適化を行いました。 このデバイスを利用すれば、通常の血液分離で使用される遠心分離のための回転モータや、マイクロ流体デバイスで多用されるシリンジポンプなどの機械的な動力源を必要としないため、 システム全体が非常にコンパクトになり、デバイスの交換等の操作が極めて簡便になると考えています。

誘電泳動を利用して血漿を抽出するデバイスの概要と原理