グリーンマテリアル研究センター

九州工業大学グリーンマテリアル研究センター

循環型社会に適応する材料創生および評価技術の確立

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国立大学法人九州工業大学
グリーンマテリアル研究センター
〒804-8550
福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1
連絡先:yando(アットマーク)life.kyutech.ac.jp

研究紹介

オープンイノベーション推進機構
准教授 安藤 義人

研究内容

石油資源に依存して利便性を求めた社会の形成は、自然や環境の破壊を伴い、昨今では地球温暖化だけでなく、海洋へ流出した廃棄プラスチックによる生態系の破壊が危惧されています。海を漂う微小な粒であるマイクロプラスチック(MP)は、ダイオキシン類やポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害な化学物質を吸着するため、食物連鎖により魚や動物だけでなく、人間に悪影響を及ぼすことが懸念されています。しかし、現代社会からプラスチックの無い社会をなくすことは現状では難しい状況です。この課題を解決するためには、最も賦存量の多い木質資源を石油の代替資源とする低炭素社会に向けた資源循環の基盤技術が必要であり、木質資源やそこから得られるセルロースなどの材料をプラスチックの代替とする生産から消費までを考慮に入れた技術開発が喫緊の研究課題といえます。その過程で得られる新たな知見と我々の経験や知識により本センターは新たなサイエンスの確立に向けて進みます。

  • バイオマスの表面に着目した分子間相互作用の制御
  • バイオマス資源を使った循環型樹脂材料の創生

研究室設備

小型二軸エクストルーダー、中型二軸エクストルーダー、自動乳鉢、ポットミル、オートクレーブ、ホモジナイザー、凍結乾燥機、遠心分離機、ゲル透過クロマトグラフィー、接触角測定装置、引張試験機、フーリエ変換赤外分光光度計、紫外可視分光光度計、顕微FTIR、サイクリックボルタンメトリー、スピンコーター、熱プレス機、熱重量分析機、電子顕微鏡、動的光散乱測定器、小型射出成型機

大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻
教授 宮崎 敏樹

研究内容

生体組織に対して高い生物学的親和性を示す材料を創成し,骨や歯などの硬組織修復や,深部がん治療に応用する研究を進めています。さらに,これらの合成プロセスからヒントを得て,環境負荷の小さい水溶液プロセスや生物に学んだバイオミメティックプロセスを利用して,セラミックスや有機-無機ハイブリッド,ナノ/マイクロ粒子を合成する試みを進めています。

  • 材料と微生物との相互作用の解明
  • 新規光触媒活性材料の創成と医用材料への応用
  • バイオミネラリゼーションプロセスの計算機シミュレーション

研究室設備

X線回折装置(粉末・薄膜),生体試料用走査型電子顕微鏡,エネルギー分散型X線分析装置,材料試験機,表面性測定機,フーリエ変換赤外分光分析装置,ゼータ電位測定装置(微粒子・平板),熱分析装置,可視紫外分光光度計,接触角計,マイクロプレートリーダー,表面粗さ計,真空プラズマ装置,超音波ホモジナイザー

大学院生命体工学研究科
准教授 前田 憲成

研究内容

「環境適応機能」という研究分野のもと、「微生物機能を活用したバイオテクノロジーの構築」に関する研究を進めている。研究のコンセプトは、自然界などに存在している特殊な能力を持った微生物の機能、および特性(酵素・遺伝子資源)に対して、それらを①解明する、②改変する、③工学的に応用するという3つの視点から追究し、環境・エネルギー分野、あるいは医療・食品分野に、有用かつ有益な革新的な研究技術を構築することである。

①下水汚泥を減容する機能、または下水汚泥を資源化する機能

これまで、下水汚泥の減容を促進する汚泥溶解菌の分離、その菌株が放出する汚泥溶解因子の特定、低温環境下での汚泥減容化促進、また下水汚泥のメタン発酵を促進するため、抗生物質投与の効果検証や細胞外高分子物質の除去の効果を行ってきた。また、下水汚泥中に含まれる窒素源を発酵分野に活用するため、下水汚泥を活用した水素ガスの高度生産化と乳酸生産の高度生産化に下水汚泥中に豊富に存在する窒素源等が寄与していることを明らかにした。

②有用産物(バイオエネルギーなど)を作る機能

遺伝子工学技術を駆使して大腸菌からの水素生成に取り組んできた。主な成果として、ギ酸からの水素ガスの生産能力が親株よりも最大で141倍向上した大腸菌株の作製に成功した。また、グルコースから多くギ酸を生産するようにデザインして、最終的に親株よりも5倍の水素生成能を持った大腸菌株の作製にも成功した。また、20種類以上の遺伝子(これまで水素生成への関与が報告されていない)が、水素生成に関わっていることを突き止め、これらの中には通常機能しない遺伝子と考えられている偽遺伝子などが含まれていることを明らかにした。

③細菌を溶菌する機能

細菌溶菌性の特性を持つ「Bdellovibrio属細菌」による細菌溶菌機能の解明に関する研究を進めている。これまでBdellovibrio属細菌による大腸菌の捕食活性が、弱酸性条件で阻害される現象を発見し、その原因の解明を行っている。また、このBdellovibrio属細菌を用いて、下水汚泥の減容化や糞便汚染菌の不活性化など、環境・衛生分野への応用研究も進めている。

④病原菌を抑制する機能

本研究は、主に九州歯科大学との共同研究によるものであり、うがい液などの口腔内試料中の細菌群の中から、「歯周病原細菌を抑制する機能を持つ菌株」を分離・同定して、その歯周病抑制機構を解明する研究を進めている。本研究も、近年着手した研究テーマであり、現在までのところ、公表論文は特にないが、ヒトの健康QOL支援に繋がる、健康長寿に資する研究内容となっている。

⑤細菌のコミュニケーションする機能

細菌は、クォーラムセンシングと呼ばれる機構によりコミュニケーションをしていることが明らかになっており、現在クォーラムセンシング阻害は、次世代の病原治療法として期待されている。本研究では、細菌が持つクォーラムセンシング阻害に適応する能力などを解明するため、クォーラムセンシング阻害剤などに対する耐性菌株の獲得とその耐性メカニズム、さらには酸化ストレス条件でのクォーラムセンシング阻害の促進などの研究を進めている。

⑥有害物質を分解する機能

博士研究の際に、「トリニトロトルエン火薬の生分解」という研究を行い、火薬分解菌の分離と火薬の生分解経路の解明、類似体化合物の分解性比較、難同定物質の新規手法による検出同定などを行ってきた。また、火薬検出のバイオアッセイ法の開発のため、トリニトロトルエン存在下でのみ、活性化するプロモーターの探索などを行った。現在は医薬品の微生物分解に関する研究を進めている。

研究室設備

微生物研究関連機器(オートクレーブ、培養器、シェーカーなど) 大型遠心機、イオンクロマトグラフ、次世代シーケンサー、超遠心機、HPLC

工学研究院物質工学研究系
准教授 城﨑 由紀

研究内容

医療・ヘルスケア分野で利用できる新しい材料の開発を目指し、主に3つの課題を軸に研究を進めています。

①ケイ素周囲の構造と細胞応答性

ケイ素は生体必須元素であり、またケイ酸イオンが私たちの身体の成長・再生に寄与していることが報告されています。異なるケイ素周囲の構造を持つ化学種と各種細胞(骨芽細胞,神経細胞,線維芽細胞等)の応答性との間の関係性を明らかにするために、キトサンーシロキサン複合体を用いて基礎的な研究を行なっています。 

②生体組織再生用足場材料の創製

神経、骨、靭帯などが欠損した際に、それらの再生を助け得る材料の開発に取り組んでいます。ゾル−ゲル法を用いて作製した、膜、ゲル、ファイバーなどの形状を持つ有機−無機複合体による生体組織再生の可能性を調べています。 

③抗菌材料の創製

感染性の病気を防ぐ新しい抗菌材料の創製にも取り組んでいます。キトサンは抗菌性を持つ材料であることは数多く報告されていますが、それを日常生活の中で違和感なく使用できる形をデザインしています。

研究室設備

走査電子顕微鏡、血液凝固分析装置、凍結乾燥機、オートクレーブ、遠心分離機、細胞培養システム(インキュベータ、クリーンベンチ、倒立顕微鏡)、多機能型プレートリーダ、ジェットディスペンサー、クリープメータ、プラズマイオンボンバー、自転・公転ミキサー、ウェスタンブロットシステム(トランスブトッロ他)、スピンコーター、微量分光光度計、ブロックバスシェーカー

生命体工学研究科
准教授 飯久保 智

研究内容

例えば太陽光を電気に変換するという技術は、すでに大きな市場となりよく知られたものになっていますが、光を電気に変換する効率は物質によって大きく異なります。この理由を解明して、さらにエネルギー変換効率の良い物質を探索するということは、研究者にとってとても興味深い問題となっています。

物質が示す機能性の発現メカニズムを正しく理解するには、それを構成する原子、さらには電子の挙動を知ることが必要不可欠です。X線や中性子などの量子ビームは、それらを調べることにとても有用で、ミクロな世界の物理法則を理解することの助けとなります。またこの理解は、さらなる新しい機能性物質の開発へ展開することを可能にします。 さらに最新の科学技術を上手に活用すれば、理論的に新物質の予言をすることができます。鍵となる技術はスーパーコンピュータを利用した計算科学です。この計算科学を使って物質中の電子や原子の状態を解き明かし、ゴミなのか、それともダイヤの原石となりうるのかについて詳しく調べる研究を行っています。

研究室設備

クラスター計算機、VASP、Wien2k、QuantumATK、Thermo-calc、Pandat、MICRESS、GPGPUサーバ

大学院生命体工学研究科
准教授 村上 直也

研究内容

半導体の機能は半導体内の電子や正孔によって発現するため、それらの挙動を知ることが重要です。しかし、そのままの状態で、微粒子中の電子や正孔などの挙動を捉えることは容易ではありません。光音響分光法(PAS)はこのような材料評価に有効な分光法であり、我々の研究グループでは、従来のPASを発展させたシステムを開発し、反応が起こっている「その場」で光触媒材料の評価を行うことのできるシステム開発を行ってきました。本センターでは、我々が開発してきたシステムをバイオマス由来材料に適用し、得られた情報を材料開発にフィードバックすることで、資源循環社会に貢献することを目標とします。

研究室設備

フーリエ変換赤外分光光度計(中赤外・近赤外)、紫外可視分光光度計、ポテンシオスタット、ポテンシオスタット、ガスクロマトグラフィー(TCD・FID)、スピンコーター、電気炉、CNCフライス

工学研究院物質工学研究系
准教授 坪田 敏樹

研究内容

バイオマス由来を原料とした炭(バイオ炭)は、古来より人類に利用されてきた比較的身近な材料です。従来、バイオ炭は世界各地で主に固体燃料として利用されてきました。しかし、固体燃料としてのバイオ炭の利用は大きく減少しており、今後、使用量が大きく増大することは見込めません。近年、再生可能資源であるバイオマスの積極的な利用の観点から、バイオ炭の新規な活用方法に関連する多方面の分野での研究が盛んになってきています。例えば、バイオマスまたはバイオ炭を原料として、細孔径分布や構成元素を制御して高機能な多孔質炭素材料を創製する研究や、ガス化燃料の製造など、工学的応用を指向する研究が盛んに行われてきています。また、2019年5月の第49回国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会にて農地・草地土壌へのバイオ炭投入に伴う炭素固定量の算定方法が追加され、バイオ炭の土壌貯留がCO2排出削減に寄与することが国際的に認められました。これからのバイオ炭に関連する研究は、多方面の分野の研究者を横断的に連携して進める必要があります。

研究室設備

サイクリックボルタンメトリー、充放電測定装置、吸着等温線測定装置、遠心分離機、塗工機、攪拌脱泡機、恒温振とう水槽、小型環状炉、pHメーター

学外連携研究者

九州歯科大学
助教 山﨑 亮太

研究内容

世界のプラスチック生産量は、2016年には年間3.96億トンと急激に増加しています。環境中に廃棄されたプラスチックが、自然分解されずに海まで流れ着き、紫外線などの影響で5 mm以下のサイズになったマイクロプラスチックは、生態系に科学的かつ物理的な被害を及ぼすと報告されているため、早急な技術開発が求められている状況となっています。マイクロプラスチック問題を解決する手段として、微生物分解・変換反応から得た電子から電気を生み出すという微生物燃料電池システムに着目し、マイクロプラスチックを資源として、微生物学的かつ電気化学的に、分解(低分子化)および電気生産を実現できる資源化技術の開発を行っています。