ニュースレター「THE DIVISION」

REPORT「学会参加報告」から


2004年の学会参加報告
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2001年の学会参加報告

2000年の学会参加報告


第9回生体関連セラミックス討論会参加報告記
九州工業大学大学院 生命体工学研究科 生体機能専攻
生体機能メカニクス講座 生体機能材料研究室
博士前期課程2年 一坊寺 崇

 

 平成17年12月1日~2日の日程で日本大学理工学部 安江任先生のお世話により,第9回生体関連セラミックス討論会が日本大学理工学部駿河台校舎にて開催されました。

 今回の討論会の参加者は学生42名,一般47名の総勢89名であり,発表件数は学生26件,一般18件の総計44件,さらに,日本大学歯学部の深瀬康公先生による「三次元X線マイクロフォーカスCTを用いた新生骨の評価 -三次元有限要素法による力学的解析-」,日本大学医学部整形外科の齋藤修先生による「Metal on metal 型人工股関節の臨床応用」と題した二つの特別講演が行われました。研究発表は,「アパタイト素材の合成と特性」「バイオガラスの合成と特性」「石灰系素材の合成と特性」「チタン系素材の合成と特性」「吸着および機能性材料」「空間・構造・多孔体の合成と利用」「ハイブリッド・複合体の作製」「ハイブリッド・複合体の特性と応用」「生体活性と in vitro 評価」「生体応答性と in vivo 評価」の10のセッションから構成されており,私は「ハイブリッド・複合体の作製」にて研究発表をし,「生体活性と in vitro 評価」にて学生座長を務めました。学会参加2回目にして座長をすることになり,質疑応答時間も長いため,たいへん緊張しましたが,進行も問題なく,発表者への質問もうまくできたので良い経験となりました。

 本討論会は発表5分に対して,質疑応答時間が10分とかなり長いという特徴があるため,他の学会と比べて質問の数がはるかに多く,内容もかなり突っ込んだものとなり,通常の学会よりも活発で有意義な質疑応答が行われたと感じました。この長い質疑応答の時間によって,先生方など質問者の考え方や疑問を持つポイント,発表者の適切な回答の仕方などを学ぶことができ,学会参加経験が少ない私にとってたいへん勉強になりました。また,自分の研究と異なる発表を聞くことによって,新たな知識が容易に得られ,自分自身の研究に対するヒントも得ることができる有意義な討論会でもありました。

 懇親会は日本大学理工学部カフェテリアで行われました。先生方や他大学の学生と有意義な話をすることができた上に,食事も大学のカフェテリアとは思えないほど豪華でとても楽しめました。

今回の第9回生体関連セラミックス討論会に参加して感じたことは,学生があまり質問をしないということです。私自身も座長を務め必要に迫られた時以外は、勉強不足のため自信を持てず、積極的に質問することができませんでした。この点を反省し,より多くの知識を得て、次回からは積極的に質問し、学会の主旨でもある「討論」ができるようにしたいと思います。

 最後に,受付業務や会場のマイク係など討論会をスムーズに進行させるために尽力頂いた日本大学理工学部のスタッフや学生の方々に,この場を借りてお礼を申し上げます。

 

(2006年3月発行、The Division No. 46より)


第 25 回整形外科セラミック・インプラント研究会参加報告記
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科
生体適合性物質科学講座
博士前期課程 2 年 岡野 浩明

 

 平成 17 年 12 月 3 日にホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区)にて、「第 25 回整形外科セラミック・インプラント研究会」が開催されました。150 人程度は着席できる広い会場がほぼ満席になるほど盛況な会議で、議論も活発に行われていました。

 研究発表は、テーマによって 7 つのセッションに分かれており、「人工骨の基礎」「リン酸カルシウム骨ペースト」「人工骨の臨床応用 1」「人工骨の臨床応用 2 -椎体形成術-」「生体材料の先端」「人工材料と生体の融合」「人工関節」から構成されていました。特別講演は、東京大学大学院医学系研究科の鄭雄一先生による「幹細胞を必要としない新規骨・軟骨再生法の開発と臨床応用」でした。特別講演を含め、約 30 件の演題が発表されました。さらに、ペンタックス株式会社による「セラミックス人工骨の将来展望」と題したランチョンセミナーも行われました。

 私が特に興味を持って聴講したセッションは「生体材料と生体の融合」です。このセッションでは、現在開発が進められている生体材料が紹介されていました。その中には、ガラスを添加して焼結したヒドロキシアパタイトセラミックスの生体分解性と骨結合能、 型リン酸三カルシウムの骨誘導能、TiO2-HDPE 複合体の骨結合能と組織親和性などの話題がありました。基礎的に開発が進められている生体材料について、動物実験や細胞の分化が評価され、骨との結合性や体内での挙動が調べられていました。生体材料に必要となる特性とその評価について、最新の開発動向と評価手法を知ることができました。これらの基礎的な話に加えて、臨床での使用実績の評価についても講演を聴くことができました。開発から臨床まで生体用セラミックス研究を一連の流れとして学ぶことができました。基礎研究により材料を合成、製造する立場からの視点とそれを用いる立場の臨床医の立場の両方から議論が交わされ、境界領域の研究分野としての特徴を十分に学ぶのに最適な研究会であると感じました。

私は昨年からこの研究会に参加しており、今年も参加しました。この研究会では、医療の現場で用いられている材料に対する要望を、直接学ぶ良い機会になっていると思います。この研究会に参加して、生体材料を作製する研究者の立場で何を目指すべきかを改めて考え直す機会になっています。今年は特に、本研究会で活躍されている先生方の発表や討論を聞いて、使用目的をしっかり考えた材料設計の重要性を改めて認識しました。

 最後に、本研究会をお世話頂きました会長の松崎浩巳先生ならびに、会場の設営と運営頂きましたスタッフの方々に厚く御礼申し上げます。次回は、山梨大学大学院医学工学総合研究部の浜田良機先生のお世話で新宿にて開催される予定です。

(2006年3月発行、The Division No. 46より)


Bioceramics18 参加報告
名古屋工業大学大学院 工学研究科 物質工学専攻(D3)
前田 浩孝

 

Biocemiracs18が、去る平成17年12月5日から8日の四日間、ぱるるプラザ京都にて開催されました。会場は、2つの講演会場と3つのポスター会場に分かれており、どの会場も座席が足りないほど、聴衆で混み合っていました。また、学生の方も多く見られ、活気あふれる学会の様子が感じられました。

今回の研究発表は、「アパタイトコーティング」、「多孔質材料」、「ガラス、結晶化ガラス」、「複合体」等の16セッションが設けられており、基調講演、ランチョンセミナー、一般講演合わせて300件を越える発表が行われました。本大会は、セラミックス、複合体等の材料開発や、細胞と材料の相互作用の研究など多岐にわたる講演がありました。私はこれまで材料関連の学会を中心に参加してきましたが、この学会では、医学研究者による細胞や動物を用いた実験や臨床例に関する報告が多いことが印象的でした。

2日目に行われた基調講演では、企業における生体材料の製品化までのプロセスについて、大変興味深く講演を聞きました。3日目に開催されたバンケットでは、芸者さん達による舞踊を鑑賞できましたので、海外からの参加者は、日本の伝統文化を味わえたと思います。また、芸者さん達と一緒に写真を撮ることができ、思い出に残るものとなりました。

今回、京都で開催されたこともありますが、日本人参加者が最も多く、日本がこの分野において研究をリードしていると思われます。この学会では、様々な視点からのバイオマテリアルに関する研究報告が行われ、私自身にとって、材料設計に関して非常に参考になり、研究に対する意欲が湧いてきました。私事ですが、今年度で名工大を卒業し、新しく環境材料の分野に挑戦します。次の分野におきましても、これまでにバイオマテリアルで勉強した点を活かして、新たな材料開発に取り組みたいと思っています。

最後に、研究室に配属されてからの6年間ご指導頂き、研究とは何かを教えてくださった春日敏宏教授に深く感謝いたします。

(2006年3月発行、The Division No. 46より)


第110回無機マテリアル学会学術講演会参加報告
明治大学大学院理工学部工業化学専攻
博士前期課程1年 山本宏明

 

去る2005年6月2日-3日にかけて、工学院大学にて無機マテリアル学会が開催されました。発表10分質疑応答5分という中で、発表件数33名により、セッコウ、石灰、セメント、環境材料およびこれらと関連する無機材料に対する研究成果が発表されました。どの発表も研究に対する熱意が伝わるものでありました。また、参加者は企業の方や各大学の先生方が多く参加しており、そのような発表に対し鋭い質問や手厳しいご指摘が多々あり、そしてそれに対する学生らの懸命な応答が見られ、活発な討論がなされていました。

私自身についても、アパタイトの合成について発表することになっており、質疑に対しての準備も行なっていました。しかしながら、その分野において先端を駆けている先生方からは、手厳しいながら知っておく必要がある質疑や今後の実験のvisionが浮かぶような熱心な意見を頂き、それに対する応答ができない自分に悔しさを感じたことを覚えています。ですが、このことは今後の研究に対するヒントとなり、また、研究を行なう上での基盤ができていないと実感でき、研究意欲への強い刺激となる貴重な一日となっていると感じます。

一日目の最後には東北大学の荒井邦夫教授が「地球環境浄化と超臨界流体処理」と題して御講演されました。エネルギーを多大に消費して暮らしている現代において、この超臨界流体技術は従来では実現不可能な革新的なエネルギー・物質変換プロセスを創出する可能性を有しているというとても興味のある内容であり、今後、多くの分野において注目される技術ではないかと感じました。

学会一日目終了後、工学院大学の隣、エステックビルにて懇親会が行われました。学会中の真剣で張り詰めた雰囲気とは一転し、和やかな雰囲気で行われため、討論会では聞けなかった質問について語り合い、親交を深められる場であったと感じます。

今後はこの無機マテリアル学会で得たさまざまな経験を活かして研究に取り込んで生きたいと思います。

(2005年8月発行、The Division No. 45より)


2005年日本セラミックス協会年会参加報告記
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
東海大学大学院 工学研究科(修士課程2年)
大久保和慶

 

2005年3月22日-24日にかけて日本セラミックス協会年会が岡山大学で開催されました。今回の学会には920名もの参加者があり、467件の口頭発表および102件のポスター発表が行われました。私はその中の23日?24日にかけて行われた「生体関連材料」の部門で発表させていただきました。発表会場は、昨年発表していたこともあり、ある程度の広さを想像していたのですが、想像していた広さよりも広く、発表に対する緊張感が急に高まりました。しかも、当日は雨だったのですが、雨の中、多くの先生方や学生、そして企業の方々が出席していて、私の緊張感もさらに高まったことを覚えています。(この極限の緊張感により、上手く発表出来ていなかったかもしれません・・・。)(右写真が私の緊張を高まらせた原因の会場です。)

本学会の発表時間は10分間で、質疑応答は5分間という限られた時間の中、質疑応答の際には様々な分野の方々からご意見を頂き、今後の自分の研究を進めていく上で大変参考になりました。また、都合により全ての発表を聞くことは出来なかったのですが、他の発表も聞かせていただきましたが、さすがその分野で最先端の研究をされている方々ばかりで、様々な操作・評価方法などを知ることが出来、自分が行っている研究に対するヒントを得ることが出来ました。

ポスター発表の会場ではポスター発表もさることながら、様々な作品や装置なども展示されていて、異分野の物もありましたが大変興味深く拝見させていただきました。(下写真参照)

 今回の岡山での2005年年会に参加して、改めて自分の勉強不足を痛感することがたくさんありました。この反省点を改善し、さらに現在行っている研究を発展させた発表が出来るように取り組んでいきたいと思っています。最後に、来年度の年会で、もし私が発表する機会がありましたら、その時はアドバイスの方を宜しくお願い致します。

(2005年4月発行、The Division No. 44より)


日本金属学会2005年春期(第136回)大会参加記
産業技術総合研究所
渡津 章

 

 日本金属学会の春季(第136回)大会は3月29日(火)?3月31日に横浜国立大学常盤台キャンパスにて開催されました。材料分野では日本有数の大きな学会らしく、講演数や分野も豊富で、さらに鉄鋼協会との共同開催分野もあり、大変たくさんの研究者が集まっていました。通常の講演に加えて、記念講演やポスターセッションなどもあり、若手研究者を集めたポスターセッションでは幅広い年齢層の研究者同士の活発な議論が交わされていました。この学会では近年、チタンやチタン合金についての関心が高いため、セッションが多い状態となっています。例えば、上述の鉄鋼協会との共同セッションにはモチタン・チタン合金モと銘打ったものが設けられており、材料戦略セッションにはモ生体・福祉「金属表面の生体機能」モが設けられていました。共同セッションは全2テーマしかなく、材料セッションも全3テーマしか設けられていないものであり、チタン系材料と生体材料への関心の高さが伺えます。

 昨年の第8回生体関連セラミックス討論会にも参加された東京医科歯科大学 塙隆夫先生が副委員長をお務めになっている生体・福祉材料の分科会は、3日間に渡っていくつものセッションを開催していました。昨年の春期大会の生体・福祉材料分科会のセッションでは招待講演にて東京医科歯科大学 山下仁大先生がご講演され、聴講した多くの研究者と活発で詳細な議論が交わされました。

 今年の学会でも生体・福祉材料分科会のセッションは聴講者が大変多く、立ち見の研究者が入り口付近までつながる状態が見られました。質問者は学生からご年配の方、又、大学から企業の方まで幅広く、自由に議論をしている状態でした。そのため、非常に広角度な質問がなされます。私の講演に対しても何人もの研究者から多角的な質問があり、講演後も質問があったため、短い発表にもかかわらず大変貴重な議論ができました。なお、生体・福祉材料分科会のセッションでは、聴講している研究者の比較的入れ替わりが多いように見受けられ、実際に室内で目にする聴講者の数よりも遙かに多くの研究者の関心を引いているようでした。また、廊下で議論するケースもあり、生体・福祉材料に対する研究者の熱意を感じる大会でした。

(2005年4月発行、The Division No. 44より)


第4回 日本再生医療学会総会 参加報告記

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
東京理科大学院 基礎工学研究科 材料工学専攻
鵜飼 奈美

 

 去る2005年3月1日-2日の2日間、大阪国際会議場にて第4回日本再生医療学会総会が開催されました。今回の学会の主題は「ライフサイエンスの新たなる挑戦」であり、2日間を通して一般講演、シンポジウムなどの口頭発表が216件、ポスター発表が399件行われ、また36件の企業展示がありました。

口頭発表では「骨」、「骨・軟骨再生材料」、「肝臓」、「幹細胞・ES細胞」などヒトの各組織別に設けられた19セッションの他、「再生医療における医工連携」、「再生医療への臨床応用」などといった特別講演も行われました。発表はどのセッションにおいても100?300人の聴講があり、中には発表を前にして長蛇の列が見られる講演もあり、集まった聴衆が熱心に講演を聴く姿勢に圧倒されました。

ポスター発表では口頭発表と同様、ヒトの組織および材料を使用する部位別に、2日間で55セッションが設けられていました。本学会でのポスター発表ではセッション毎に座長がつき、各個人にプレゼンの時間が与えられていました。同時に14セッションでプレゼンが同時に行われていたにも関わらず、1セッションにつき40?50人の聴講があり、短い時間の中で活発に質疑が行われていました。

企業展示では、多くの企業が自社の製品を展示しており、実際に製品に関する説明を企業の担当者から直接受けられる機会でもあるせいか、活発な質疑が行われていました。今回の学会全体を通じては、組織の自己再生を目指す研究報告、また再生医療実現に向けた新規材料開発に関する研究報告が多く見受けられました。私自身、専攻は材料工学であるため、生体材料をより深く理解するためにヒトの組織や細胞に関する知識が必要であると感じていましたが、今回の学会に参加させていただいたことによって、学ぶべきことがたくさんあることに再度気付かされました。今回の学会で得たものを糧として、日々の研究を真摯に行っていこうと考えております。

(2005年4月発行、The Division No. 44より)


ISIEM参加報告記
明治大学大学院理工学研究科 博士前期課程1年
宮下敏行

 2004年10月18日〜21日にかけてオランダ・アイントホーヘンにおいて、International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2004 (ISIEM 2004)が無機マテリアル学会およびDutch Ceramic Societyの共催で開催されました。世界20ヶ国より245名が参加し、116件の口頭発表および129件のポスター発表が行なわれました。
  ISIEM2004は主に無機材料と環境材料を対象とし、Batteries, Recycling, Composites, Biomaterials, Nanocomposites, Functional materials, Cementsの総計7セッションから構成されており、それらの発表内容は非常に多岐にわたるものでした。このISIEMは私にとって初めての国際シンポジウムであり、Biomaterialsセッションにポスター発表で参加いたしましたが、今まで味わった事のない雰囲気に圧倒されました。しかしながら、多くの先生方から様々なアドバイスと温かい励ましのお言葉を頂き、今後の研究の励みとなりました。
  ポスター発表の翌日には、バイオマテリアルの口頭発表を聞きに行きました。語学力が不充分であったために発表内容をすべて聞き取ることは出来ませんでしたが、他の国の方々の研究に対する姿勢を実感することができました。さらに質疑応答では活発に意見のやり取りが行なわれ、見ているだけでも非常に有意義でありましたが、発表内容を理解できるようにこれまで以上に英語に真剣に取り組まなければならないと深く反省しました。
 20日の夜にはバンケットが開催され、バスで近未来的な建物に連れて行かれました。少しの間、建物の中を見学した後、バイオリンとピアノの演奏を聞きながら食事をしました。一つのテーブルは6人がけでしたが、私たちのテーブルは5人で座っていると、地元のアイントホーヘン大学の女子学生が同席することになりました。会話はもちろん英語であり、彼女が話すと全員で必死になって聞き取り、拙い英語でありますが私も今までの人生の中で最も一生懸命に英語で会話をし、二度と忘れることのできない思い出となりました。今後はこの国際シンポジウムで得た経験を活かして研究に取り組んで行きたいと思います。
(2005年1月発行、The Division No. 43より)


第8回生体関連セラミックス討論会参加報告記

九州工業大学大学院 生命体工学研究科
生体機能メカニクス講座 生体機能材料研究室
博士後期課程2年
吉田章彦

 去る平成16年12月2日〜3日の日程で明治大学理工学部 相澤守先生のお世話により,第8回生体関連セラミックス討論会が明治大学アカデミーコモンにて開催されました。
 今回の討論会の参加者は学生63名,一般82名の総勢145名であり,発表件数は学生29件,一般23件の総計52件,さらに,慶応義塾大学医学部の松本守雄先生による「整形外科領域における生体材料の臨床応用」と題した特別講演が行われました。研究発表は、「ハイブリッドおよびコンポジット」「アパタイトおよびリン酸カルシウム」「アパタイト形成」「ガラスおよびガラスセラミックス」「アパタイトファイバースキャフォールド」「多孔質セラミックス」「マテリアルと細胞のインタラクション」「マテリアル表面の特性とその利用」の8つのセッションから構成されていました。私が特に興味を持って聴講したセッションは「アパタイトファイバースキャフォールド」であり、溶解性やスキャフォールドの創成、細胞とのインタラクションを含む基礎研究から、臨床を模擬した動物実験までの一連の研究成果の報告がありました。新しい機能を有するアパタイトファイバーの実用化を意識した精力的な研究に非常に感銘を受けました。
 本討論会は発表5分に対して,質疑応答時間が8分(一般10分)とかなり長いのが特徴です。他の学会においては,質疑応答の時間が瞬く間に過ぎていくように感じられるときもあるのですが,本討論会においてはそうはいきません。しかも,優れた学生の発表に対する表彰およびベスト質問賞が企画されたことから,発表に対するプレッシャーは勿論のこと、学生間での競争意識があったのではないかと思われます(少なくとも九工大においては,先生方々から何度も”表彰”という言葉が発せられておりました)。その甲斐もあって,通常の学会よりも活発な質疑応答が行われたと感じました。しかも,本討論会における長い質疑応答の時間によって,先生方々などがされる質問のポイントをはじめ,発表者の適切で端的な回答など,論文や専門書を読んでもなかなか得られない生きた知識や質の高い思考回路を効率的に養えると感じました。また,他大学などの発表を聞くことによって,最新情報の収集や自分自身の研究に対するヒントを得ることができる有意義な討論会でもありました。
 懇親会は発表会場とは別棟の明治大学リバティータワーの23Fのホールで行われました。先生方や他大学の学生と有意義な話をすることができた上に,北九州市とは一味も二味も違う東京の夜景を楽しむことができたあっという間の2時間でした。
 今回の第8回生体関連セラミックス討論会に参加して,活発で積極的な他大学の学生の方々がいることを身近に感じ,私自身の勉強不足と消極的な姿勢を痛感しました。この反省を反省のみで終わらせぬよう,今後の勉学に活かしたいと思います。
 最後に,受付業務や会場のマイク係など討論会をスムーズに進行させるために尽力頂いた明治大学の学生の方々に,この場を借りてお礼を申し上げます。
(2005年1月発行、The Division No. 43より)


第24回整形外科セラミック・インプラント研究会参加報告記
ナカシマプロペラ株式会社
ナカシマメディカル事業部
杉野 篤史

 去る平成16年12月4日にメトロポリタンプラザ(池袋)にて「第24回整形外科セラミック・インプラント研究会」が開催されました。本年度の研究会も、立って聴講される先生方がいらっしゃるほどに盛況で、非常に活発な議論が行われておりました。
 研究発表は、「人工関節」「人工骨の臨床応用」、「新しい人工材料〜開発の現場から〜」、「人工骨の基礎」、「骨再生〜細胞〜」、「骨再生〜BMP〜」等の10セッションが設けられており、特別講演やランチョンセミナーを含む32件の講演がありました。各種セッションを聴講させて頂いて、私が特に強い印象を受けたことは、国内の人工関節や人工骨を製造販売しております民間企業からの講演が非常に多かったことです。全発表件数の約3割が民間企業からの発表であり、次世代のセラミックス系生体材料の開発に向けて各社精力的な研究をされておりました。現在、日本の医療用具市場は大半が輸入品に占有されておりますが、人工骨市場のみは国内企業が占有しています。今回の研究会に参加して、これらは発表されておりました各社の研究開発力の高さに後押しされていることによると改めて実感致しました。一方で、同研究会は臨床と工学の先生方が共に参加されている学会であり、基礎からのシーズと臨床からのニーズに対して非常に活発な議論が行われておりました。今回の研究会では、基礎的な発表については午前中にポスター掲示、午後に講演と新しいシーズに対して議論するための時間を十分に設けて頂いており、セラミックス系生体材料への臨床医への関心の高さに感銘を受けました。
 私は学生時代から本研究会に参加させて頂いており、ここ数年は民間企業からの参加となっております。本研究会に参加することで、立場や視点が変わっても生体に関わるセラミックスの研究に従事できていることに非常に喜びを感じ、さらに活発な議論を聴講することで研究に対する意欲・興味が刺激されているように感じております。本研究会がますます発展されることを心よりお祈りしております。
 最後に、本研究会をお世話頂きました会長の四宮先生ならびに、会場の設営と運営頂きましたスタッフの方々に、厚く御礼申し上げます。
(2005年1月発行、The Division No. 43より)


最終更新日:2006年11月2日

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